アベノミクスの検証と日本経済のこれからを考える

考え・意見

今年、僕の月給は8000円上がりました。

金額としてはまあままかなといった水準ですが、ここから税金等を取られて残るのは5000円くらいでしょうか。インフレ率は2%を超えてきていますから、実質賃金は横ばいといったところなので両手を上げて喜ぶといった感じではありません。

頑張って働いて昇給しても、インフレで相殺されてしまうので生活水準は一向に上がりません。仕事がうまく行っているうちは良いのですが、ギリギリで維持している状態ですからもしも成果が出なければすぐに生活は苦しくなってしまうでしょう。

しかも、僕の勤めている会社の規定では、固定昇給に上限が定められています。上限に達してしまえば役職に就くなどしなければ給与はずっと横ばいです。インフレがこれからも続くとすれば、給与が上がらないと生活は維持できなくなってしまいます。

まだ僕はその上限には届いていませんが、いつかはその壁に当たるときが来てしまいます。もちろん、うまく役職につければよいのですが、そう簡単なものでもありませんし先行きがとても不安です。

もうひとつの改善策として給与上限の引き上げがありますが、それは経営者の判断になってしまうので労働者の僕にはどうしようもありません。

それどころか僕の会社では今年、給与制度の変更があって見込残業を基本給に組み入れるとしました。

基本給25万円、見込み残業5万円の人は、基本給30万円にまとめられたのです。ボーナスは基本給を元に計算されるので一時的にはメリットがあるのですが、見込み残業が無くなった分だけ上限に達した際の支給額は減ります。

これからこどもが大きくなり出費は増えるのに、収入が横ばいとなれば生活は苦しくなる一方です。

僕と同じような不安を抱えている方は少なくないのではないでしょうか?

なぜこんな事になっているのか、今の日本経済を分析してみました。

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アベノミクスで日本はまったく成長していない

こんな社会になってしまったのは何が原因なのでしょうか?

僕はその原因がアベノミクスの失敗と、その反省がなされていないことだと思います。

これはドルベースで換算した日本の名目GDPの推移を表したグラフです。

一目瞭然ですが、バブル崩壊のあった1990年ごろの水準から、多少の上下はあれど横ばいが続いています。

直近だけに注目すれば、2012年ごろをピークにして右肩下がりです。2016年に一度下げ止まったものの、コロナショックで急落した後はジリジリと下げ続けています。

ニュースでは株価が高騰しているとか、円建てGDPが600兆円を初めて超えたなどと報道されていますが、生活が一向に上向かないと感じている人が多いのではないでしょうか。

日本は資源を輸入に頼っており、その取引は基軸通貨であるドルで行われていますから、ドル建てGDPでチェックしなければ実態は見えません。

GDPが減ってしまえば企業利益が縮んでしまうので、僕たちの給与も減ります。もし額面で給与が増えていたとしても、物価高に追いつかなければ実際の生活水準は下がっていきます。

給与
2017年101.8
2018年101.8
2019年101.2
2020年100.1
2021年100.6
2022年98.8
2023年83.7
実質賃金推移

厚生労働省 – 毎月勤労統計調査

※実質賃金は、名目賃金指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で除して算出している。

2020年を100として各年の実質賃金の推移を表したものです。2020年はコロナショックもあり経済が大幅に縮小しましたが、そこと比べても2023年には17%も下がっているのがわかります。

これは急激な円安によって資源の輸入コストが上がっていることに対して、給与増が追いついていないことが原因です。

しかも、日本では、価格を据え置く代わりに内容量を減らすという数字に現れない経済の縮小が進んでいます。

これは、カルビーポテトチップスの値上げの歴史です。価格を上げながらも、徐々に内容量が減っている事がわかります。

最大、107gあったものが、今となっては20%以上も中身が減ってしまっています。

85gから80gの減量はわずか5gかもしれませんが、割合にすると6%になります。給与が30万円の人であれば2万円の昇給をしないと6%の価格上昇に追いつきません。

値上げ分も考えると、僕の場合は昇給分ではまったく追いつきませんから、これまでと同じようにポテチを買うことはできません……

今の物価高の原因の一つが円安です。日本はほとんどの資源を輸入していますから、円安によって輸入コストが上がると商品価格の上昇に繋がります。

農業など一見すると国産で賄っているような産業でも、肥料や農耕機、輸送につかうガソリンなどは輸入品ですから為替の影響は避けられません。

2020年には1ドル105円~110円だったのが、今では150円前後になっており、約35%も円安が進んでいます。

例えば、原価50円のハンバーガーを100円で売っていたとすると、117.5円で売るようにしないと同じ利益が出ません。

もちろん原価がそのまま35%上がるわけではありませんし、値上げしたらお客さんが離れてしまうこと等、色々な要因があるので単純計算はできませんが、こうして数値化してみると昨今の急激な物価高の原因がわかりやすいと思います。

この急激な円安の原因は、日本と海外の金融政策の差です。

日本は金利が1%程度なのに対して、アメリカは5%もあります。つまり、日本円を借りてアメリカの銀行口座に預金しておくだけで4%の金利を何もしなくても貰えてしまうのです(実際はそう単純ではありませんが)。

著名な投資家であるウォーレン・バフェットは、円でお金をかりて投資で大儲けしています。

ただ、こんなに偏った金利差は通常では長続きしません。

大量に日本円を持っている人や企業は、通常は現金で置いておいておくのではなく、安定した資産である日本国債で資産を持っています。しかし、利息よりもインフレが進んでしまうと損してしまいますから、円安が進むと国債が売られることになります。

国債が売られると金利が上がります。信用の低い人へお金を貸す時は金利が高くなるのと同じですね。

これは悪いことばかりではなく、金利が上がることで円安が止まりバランスが取られることになります。

ただ、今は日本政府と日銀の政策によって、一定の金利以上になると日銀が国債を引き取るということになっています。これはycc(イールド・カーブ・コントロール)とも呼ばれています。

誰も欲しがらない大量に在庫があまった処分品を、日銀が大量に買い入れてなんとか維持しようとしていうのが現状です。

日銀は自分でお金を発行できますから、どんどん国債を買うことはできるのですが、その悪影響が無いはずがありません。円安と物価高として我々の生活に確実にダメージを追わせています。

ネット上ではMMT論や、積極財政などが支持される意見が多いですが、この原理を理解していればリスクも見えてくると思います。

  1. 大胆な金融政策
  2. 機動的な財政政策
  3. 民間投資を換気する成長戦略

アベノミクスでは3本の矢という政策の軸がありました。1と2は同じことを言っているようにも見えますが。

簡単に言うと、お金を大量に発行してインフレさせることで、貯金したままでは価値が下がってしまうという危機感を煽り、投資に繋げようという意図でした。

具体的には、法人税の引き下げ、ゼロ金利(一部マイナス金利)、国債を財源とした財政出動によるお金のバラマキなどです。

これははじめに紹介したドル建てGDPのグラフですが、2012年を見ると円安によってガクンと下がっているのがわかります。

円安になれば輸出業は儲かりますが、下落分を補うことはできなかったようです。

多少の円安になっても、まだまだ製造工場の日本回帰は起こらず、ただただ円安による輸入コストの増加というデメリットを負っただけになりました。

1ドル150円という水準となった現在でも、日本への投資はそれほど進んでいないように思います。一部では熊本に半導体工場ができるなどのニュースは出ていますが、全国的なものとはなっていません。

トヨタが国内に製造工場を新設する、なんて話はまったくでませんよね。

とはいえ、僕はアベノミクスのすべてが失敗だったとは思いません。

国内の工場が海外に流出してしまったのは、過度な円高が要因のひとつだったので対策は必要だったでしょう。しかし、結果論ではありますが1ドル150円の現在でも国内への投資が遅々としてすすまないことからも、円安にすれば日本経済が回復するという考え方は安直過ぎたと思います。

また、致命的だったのは、消費増税したことです。賃金がろくに上がっていないのに5%もの増税に耐えられるわけもなく、国内消費が縮小しドル建てGDPは伸び悩んで2012年以前を上回ることはありませんでした。

給与増が進まない原因に、労働者の増加があります。

65歳未満の労働者は右肩下がりですが、労働人口や就業者数は増加しています。これは、女性の社会進出や65歳以上の高齢者が働くようになったからです。

物の価格は需要と供給のバランスで決まりますが、給与も同じです。

少子化の日本では労働者不足によって給与が上がりそうなものですが、グラフのとおり働く人が増えたことによって需要が満たされ給与はなかなか上がらない状態が続きます。

コロナ禍以降は、無人レジやセルフレジの増加といったロボット化が進んだことも、求人減少や給与増の抑制に繋がっていそうです。

外国人労働者もこの10年で150万人以上増えていますが、2023年の時点で約205万人と労働者全体の総数と比較すると3%程度でまだ影響は限定的に見えます。ただ、このまま増加を続け5%、10%となってくると新たな問題が出てきそうです。

外国人労働者は、賃金の低い単純労働者が多く、日本人と比べて生活保護受給率が高くなっています。今はしっかり働いてくれていたとしても、高齢化や技術発展によって職を失った際に生活保護となってしまう人が増えてしまうでしょう。

また、不法滞在や治安の悪化、文化の違いによる摩擦などの社会問題も増えています。

一方で、2024年になると大企業を中心として徐々に給与増のニュースが入るようになってきました。労働人口の増加が上限にきているとすると、少子化も相まって給与が継続的に上がっていくという期待ができますがどうなるのでしょうか。

AI技術が発展しロボット化がすすめば賃金上昇どころか、大量失業時代が来るかもしれません。

これからの日本はどうなるのでしょうか。

個人的には積極財政は反対で、規制緩和や減税政策で経済成長を目指すべきだと思います。極力、小さな政府とするのが理想です。

結局のところ、ビジネスの素人である政治家が手動して国費を投じても効率が悪く、利権を作るだけになるからです。アベノミクスで大盤振る舞いした結果、ドル建てGDPは上がらずに円建ての名目GDPや株価だけ膨らんだという反省から学ぶべきです。

自民党の有力者である二階元幹事長の地元の和歌山県では人口が90万人を下回っていますが、紀伊半島をぐるっと一周するような高速道路の整備がすすんでいます。権力を用いて選挙対策として地元を優遇しているのは明らかです。

五輪や万博といったイベントで数千億から数兆円の税金が投じられますが、それで私腹を肥やすのは政治家やお友達企業だけでしょう。

財政支出を抑え、その代わりに減税することで国民の可処分所得を増やすべきです。所得が増えれば個人支出の増加によって企業も潤い経済成長に繋がります。

日本のGDPの5割が個人消費が占めます。GDPを上げて経済成長を促すならば一番効果的なのは消費税の減税でしょう。

小さな政府を目指すことによって国民の権利と責任は増します。日本の手厚すぎる社会保障は縮小し、その代わりに社会保障料を減らすことで所得が増やせます。

医療費は上がりますが、自由に使えるお金が増えるというメリットもありますので各々が健康に気をつけるようになるでしょう。若い頃はそれほど病院に行くことはないので、浮いたお金を投資に回すなどして資産形成することもできます。

財務省 – 国民負担率

今の日本の国民負担率は45%ほどです。働いたお金の半分くらいは税金として取られてしまいます。

人は、自分の時間を切り売りして仕事をし、その対価としてお金を得て生活しています。つまり、お金と命は同価値といってもよいでしょう。

税金が高いほど国の権力は増し、国民の自由度は減っていることになります。

手取りが増やしても後先考えずに浪費してしまうという人もいますから、ある程度は公的な保護制度は必要でしょう。しかし、国民負担率が45%というのはあまりにも高すぎます。

しかし、社会保障の縮小という政策は国民の反対によって実現は難しいのかもしれません。インフレによって実質的な社会保障の縮小が進むというのがこれからの日本の未来のような気がします。

この厳しい時代に、なんとか所得を増やす方法を考えなければなりません。

本業で上手くやれる人は仕事に集中するのが良いでしょう。しかし、昇給をめざしても上限はありますし、役職の席は限られていますからすべての人が望むように給与を増やすことはできません。

本業とは別に、副業をするという道もあります。欧米では物価高によって生活に困窮し、ダブルワークをする人が増えています。本業のスキルを活かして業務委託を受けたり、土日だけアルバイトに入るという方法もあるでしょう。

1日5000円のアルバイトでも月8日働けば4万円になりますから、本業で昇給を目指すよりも簡単かもしれません。もちろん、休みが無くなってしまうのでずっと続けるのは厳しいですが、若い人であれば選択肢のひとつになりそうです。

また、インフレ時代には現金の価値は目減りしていきますから、資産を持つことが重要です。日経平均やS&P500などへの株式投資で資産形成を目指します。

アメリカの主要株価指数であるS&P500は、過去60年のリターンが年率7%ほどでした。これは10年で2倍、20年で4倍そして30年後には8倍にもるペースです。この間には、ITバブルやリーマンショッックも含まれていますが、それを加味しても毎年平均7%も成長しています。

収入を増やしながら、余剰資金で資産形成を目指し、将来に備えることがこれからの日本で生きるうえで重要になっていきそうです。

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